3L04 2016年春の年会 - Atlas

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鉛リチウム流動場における低放射化フェライト鋼の共存性に関する研究 (2) コロージョン・エロージョン箇所の詳細分析と機構検討 Experimental study on compatibility of reduced activation ferritic martensitic steel with flowing Pb-17Li (2) Discussions on mechanism of corrosion erosion based on results of metallurgical analysis 近藤正聡 1 , 菱沼良光 2 ,室賀健夫 2 1 東京工業大学原子炉工学研究所, 2 核融合科学研究所核融合システム研究系 核融合炉の燃料増殖材として期待さてい鉛合金について、候補構材料であ低放射化鋼 の流動場におけ腐食特性明かにした。類似した構有す静止場腐食試験装置、等温型撹拌流動場腐食試験装置、 非等温型撹拌流動場腐食試験装置使用して、500の条件で 250 時間か 1000 時間の腐食試験実施した。静止場お 流動場に浸漬した試験片の接液表面の金相観察の結果か、流動場で生じ現象機構論的に考 察した。 液体、増殖材、共存性、低放射化鋼 1. 緒言 鉛合金(P-17L)は、核融合炉の液体燃料増殖材として期待さてい。国内外にお いて実施さてい静止場及流動場の腐食試験は、小型静止場試験大型流動等の様々な構 の装置用いて実施さたのであ、そぞの試験において腐食機構決定づけが大きく事な 体系であた、実験結果単純に比較す事はできない。そえ、流の影響温度勾の影響切分 けて議論す事は難しい。本研究の目的は、P-17L と低放射化鋼の共存性において重要な であ温度条件、流動条件、温度勾条件の影響について、統一的な体系で腐食試験実施す事に明 かにす事であ。2015 年日本原子力学会秋の大会では、一の腐食試験の結果として試験片の腐食に伴う重 量変化の中心に報告した。流動場において流速が大きくな事に重量減が大きくな事が明かにさ てい。本論文では、P-17L 流動場におけ材料腐食挙動金相観察の結果か機構論的に議論した。 2. 実験条件 腐食試験の温度条件は主に 773K で、試験時間は 250~1000 時間であ1。低放射化 鋼 JLF-1(JOO-HEA)(F-9C-2-0.1C)試験材 料として使用した。等温型撹拌流動場試験装置お 非等温型撹拌流動場試験装置用いて、流動場 条件におけ腐食試験実施した。試験後、一の 試験片は L 用いて洗浄して試験片の重量減接 液表面の腐食状態調1、その他の試験片は鉛 が付着した状態で切断し、表層断面の腐食 の金相観察実施した。 3. 実験結果考察 図1に腐食試験後の金相観察の 結果示す。等温条件(773K, 250)の撹拌流動場 試験の結果(S-2)か、JLF-1 鋼の表面が粒状組織と なってい事がかった。浸漬時間倍とした流動場 試験(S-3)では、粒状組織内に微小な空隙が多く発 生してい事が分かった。一方、非等温撹拌流動場 試験の結果(S-4)か、等温試験と同様の粒状組織 組織内の空隙が観察さた他、空隙が続した のと思亀裂状の凹が多く存在す事が分か った。次に、断面観察の結果か、流動場試験では 接液表面に F C の濃度が減少してい腐食層が 5μ 以下程度の深さで見た(C-1)。試験片表面 に付着していた鉛かは、その腐食層の組成 と類似した粒状塊が多く観察さた。た、非等温撹 拌流動場試験において腐食層の分的な破壊が 観察さた(C-2)。鉛中で形成さた粒状腐 食層が流にって破壊さて が発生していという事が示唆さた。 謝辞 腐食試験実施に協力してくた東海大石井政臣君に感 謝の意表す。参考文献 [1] 近藤正聡、石井政臣、室賀健夫、 2015 年日本原子力学会秋の大会、N-179 9 日~9 11 日、 静岡大学 (2015). * Masatoshi Kondo 1 , Yoshimitsu Hishinuma 2 and Takeo Murga 2 1 Tokyo Tech., 2 NIFS. 5.0μm 5.0μm (S-2) (S-3) 5.0μm (S-4) 5.0μm (S-1) 剥離した表層 20μm (C-1) JLF-1 腐食層 付着Pb-17Li埋め込み 樹脂層 (C-2) JLF-1 Pb拡散層 埋め込み 樹脂層 100μm Erosion 箇所 (Fe) (Cr) (Pb) 1 腐食試験後の表面・断面の観察・分析結果 (S-1)浸漬前表面 SEM (洗浄後)(S-2)等温撹拌試験(773K, 250hr)表面 SEM (洗浄後)(S-3)等温撹拌試験(773K, 500hr)表面 SEM (洗浄後)(S-4)非等温撹拌試験(743K, 500hr)表面 SEM (洗浄後)(C-1)等温撹拌試験(773K, 250hr)断面 EPMA (未洗浄)(C-2)非等温撹拌試験(743K, 500hr)断面 EDS (未洗浄) 3L04 2016年春の年会 2016年 日本原子力学会 - 3L04 -

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鉛リチウム流動場における低放射化フェライト鋼の共存性に関する研究 (2) コロージョン・エロージョン箇所の詳細分析と機構検討

Experimental study on compatibility of reduced activation ferritic martensitic steel with flowing Pb-17Li (2) Discussions on mechanism of corrosion erosion based on results of metallurgical analysis

*近藤正聡 1, 菱沼良光 2,室賀健夫 2

1東京工業大学原子炉工学研究所,2核融合科学研究所核融合システム研究系

核融合炉ブランケットの燃料増殖材として期待されている鉛リチウム合金について、候補構造材料である低放射化フェライト鋼

の流動場における腐食特性を明らかにした。類似した構造を有する静止場腐食試験装置、等温型撹拌流動場腐食試験装置、

非等温型撹拌流動場腐食試験装置を使用して、500℃の条件で 250 時間から 1000 時間の腐食試験を実施した。静止場および

流動場に浸漬した試験片の接液表面の金相観察の結果から、流動場で生じるコロージョン・エロージョン現象を機構論的に考

察した。 キーワード:液体ブランケット、トリチウム増殖材、共存性、低放射化フェライト鋼

1. 緒言 鉛リチウム合金(Pb-17Li)は、核融合炉ブランケットの液体燃料増殖材として期待されている。国内外にお

いて実施されている静止場及び流動場の腐食試験は、小型静止場試験ポットや大型流動ループ等の様々な構造

の装置を用いて実施されたものであり、それぞれの試験において腐食機構を決定づけるパラメーターが大きく事な

る体系であるため、実験結果を単純に比較する事はできない。それゆえ、流れの影響や温度勾配の影響を切り分

けて議論する事は難しい。本研究の目的は、Pb-17Li と低放射化フェライト鋼の共存性において重要なパラメータ

ーである温度条件、流動条件、温度勾配条件の影響について、統一的な体系で腐食試験を実施する事により明ら

かにする事である。2015 年日本原子力学会秋の大会では、一連の腐食試験の結果として試験片の腐食に伴う重

量変化のデータを中心に報告した。流動場において流速が大きくなる事により重量減が大きくなる事が明らかにさ

れている。本論文では、Pb-17Li 流動場における材料腐食挙動を金相観察の結果から機構論的に議論した。

2. 実験条件 腐食試験の温度条件は主に 773K で、試験時間は 250~1000 時間である[1]。低放射化フェライト

鋼 JLF-1(JOYO-HEAT)(Fe-9Cr-2W-0.1C)を試験材

料として使用した。等温型撹拌流動場試験装置およ

び非等温型撹拌流動場試験装置を用いて、流動場

条件における腐食試験を実施した。試験後、一部の

試験片は Li を用いて洗浄して試験片の重量減や接

液表面の腐食状態を調べ[1]、その他の試験片は鉛リ

チウムが付着した状態で切断し、表層断面の腐食部

の金相観察を実施した。

3. 実験結果・考察 図1に腐食試験後の金相観察の

結果を示す。等温条件(773K, 250hr)の撹拌流動場

試験の結果(S-2)から、JLF-1 鋼の表面が粒状組織と

なっている事がわかった。浸漬時間を倍とした流動場

試験(S-3)では、粒状組織内に微小な空隙が多く発

生している事が分かった。一方、非等温撹拌流動場

試験の結果(S-4)から、等温試験と同様の粒状組織

や組織内の空隙が観察された他、空隙が連続したも

のと思われる亀裂状の凹みが多く存在する事が分か

った。次に、断面観察の結果から、流動場試験では

接液表面に Fe や Cr の濃度が減少している腐食層が

5μm 以下程度の深さで見られた(C-1)。試験片表面

に付着していた鉛リチウムからは、その腐食層の組成

と類似した粒状塊が多く観察された。また、非等温撹

拌流動場試験においても腐食層の部分的な破壊が

観察された(C-2)。鉛リチウム中で形成された粒状腐

食層が流れによって破壊されてコロージョン・エロー

ジョンが発生しているという事が示唆された。 謝辞 腐食試験実施に協力してくれた東海大石井政臣君に感

謝の意を表す。参考文献 [1] 近藤正聡、石井政臣、室賀健夫、

2015 年日本原子力学会秋の大会、N-17、9 月 9 日~9 月 11 日、

静岡大学 (2015). *Masatoshi Kondo1, Yoshimitsu Hishinuma2 and Takeo Murga2

1Tokyo Tech., 2NIFS.

5.0μm

5.0μm

(S-2)

(S-3)

5.0μm

(S-4)

5.0μm

(S-1)

剥離した表層

20μm

(C-1)

JLF-1 層腐食層付着Pb-17Li層埋め込み樹脂層

(C-2)

JLF-1 層Pb拡散層

埋め込み樹脂層

100μm

Erosion

箇所

(Fe)

(Cr)

(Pb)

図 1 腐食試験後の表面・断面の観察・分析結果

(S-1)浸漬前表面 SEM像(洗浄後)、

(S-2)等温撹拌試験(773K, 250hr)表面 SEM像(洗浄後)、

(S-3)等温撹拌試験(773K, 500hr)表面 SEM像(洗浄後)、

(S-4)非等温撹拌試験(743K, 500hr)表面 SEM像(洗浄後)、

(C-1)等温撹拌試験(773K, 250hr)断面 EPMA像(未洗浄)、

(C-2)非等温撹拌試験(743K, 500hr)断面 EDS像(未洗浄)

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