圧電振動型磁界センサ - 東京工業大学 · 小さく出来る...

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東京工業大学

学士論文

指導教員 上羽 貞行 教授

中村 健太郎 助教授

平成 19年 2月

提出者

学科 電気・電子工学科

学籍番号 03_16111

氏名 檀 慶太

圧電振動型磁界センサ

学科長等 認定印

平成 18年度 学士論文内容梗概

圧電振動型磁界センサ

指導教員 上羽 貞行 教授 中村 健太郎 助教授

電気・電子工学科 0316111 檀 慶太

近年ホール素子や磁気抵抗素子のような小型の磁界センサは携帯電話、カーナビゲーシ

ョンなど広い分野で利用が進められているが、温度特性が悪いなどの欠点が存在する。本

研究では圧電素子による振動を用いた全く新しい原理の磁界センサを提案し、その構成方

法と特性について検討する。 圧電素子振動子の端部に振動方向と直交する方向の検出電極を設けると、磁界を横切っ

て検出電極が振動するため、電磁誘導によりフレミングの右手の法則で示される方向に振

動周波数の交流起電力が発生する。この電圧は振動速度および磁束密度に比例した値とな

るので、磁界センサとして動作する。長さ 7 mmの検出電極を 400本集積化し、振動速度0.7 m/sを与えれば、地磁気の 1/30である 0.01 Gで 2μVの出力電圧が得られることになるが、これは市販のホール素子とほぼ同感度である。 本研究では圧電セラミックスである PZTによる矩形板を用いた長さ方向縦振動型センサ

(43×7×1 mm)とたわみ振動型センサ(43×7×2 mm)、円板の拡がり振動を用いた円板型センサ(直径 16 mm,厚み 1 mm)の 3種類の構成法について検討を行った。それぞれの構成法について出力電圧の振動速度依存性、磁束密度依存性、磁場入射角度依存性の測定を行い、

理論通りに動作をしていることを確認した。振動を励振する電圧が、圧電効果や電気容量

を介して検出電極に漏れてくるが、最小検出磁界を向上するためには、この漏れ電圧を抑

圧することが必要であることを指摘した。提案した3種類の構成法全てで、10 Gオーダーの磁場強度の検出が可能であったが、最も感度が高かった長さ方向縦振動型センサでは、

0.4 Gにおいて出力電圧は 0.58 μVとなった。このときの理論値は 0.60 μVである。

1−

円板型センサは漏れ電圧が高かったが、中央にある励振電極部のみを分極し、励振電極

と外周にある検出電極間の距離を長くとり、検出電極どうしの半径差が短い構造ならば漏

れ電圧が軽減することを示した。

第 1章 緒論 1.1 研究背景 1.2 研究目的 1.3 本論文の構成

第 2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系 2.1 圧電振動型磁界センサの動作原理 2.2 出力電圧の理論式の算出 2.2.1 理論感度の算出

2.3 漏れ電圧に対する検討 2.4 試作品の構造 2.5 本研究の測定系

第 3章 長さ方向縦振動型センサ 3.1 長さ方向縦振動型センサの製作

3.1.1 長さ方向縦振動型センサの共振周波数の測定 3.2 長さ方向縦振動型センサの特性 3.2.1 漏れ電圧の大きさ 3.2.2 振動速度特性 3.2.3 磁束密度特性 3.2.4 磁場入射角度特性

第 4章 たわみ振動型センサ 4.1 たわみ振動型センサの製作 4.1.1たわみ振動型センサの共振周波数の測定

4.2 たわみ振動型センサの特性 4.2.1 漏れ電圧の大きさ

4.2.2 振動速度特性 4.2.3 磁束密度特性 4.2.4 磁場入射角度特性

第5章 円板型センサ

5.1 円板型センサの製作 5.1.1 円板型センサ1の構造 5.1.2 円板型センサ2の構造 5.1.3 円板型センサの共振周波数の測定

5.2 円板型センサ1と円板型センサ2の漏れ電圧の比較 5.2.1 圧電効果による影響 5.2.2 励振電極と検出電極間の距離による影響 5.2.3 分極部分による影響

5.3 円板型センサ2の特性 5.3.1 振動速度特性 5.3.2 磁束密度特性 5.3.3 磁場入射角度特性

第 6章 結論 6.1 まとめ 6.1.1 3種類の構造法の比較 6.2 本研究の課題

謝辞 参考文献 付録1 ヘルムホルツコイルの製作

第 1章 緒論

第1章 緒論

1.1 研究背景 磁場の大きさや向きを検出する磁界センサは近年携帯電話、カーナビゲーションなど様々

な製品や磁気ヘッドなどの部品に用いられている[1]。例えば最近の携帯電話にはナビゲーシ

ョン機能があり、内部に磁界センサを用いた電子コンパスが組み込まれているものも存在

する。このように近年小型化してきている携帯電話などの製品にも用いられているので、

磁界センサも小型化したものが望まれている。現在磁界センサとして用いられている、ホ

ール素子や磁気抵抗素子もこのような目的の元に用いられている。しかしながらホール素

子などには Table1 に記すような短所が存在する[2][3]。また磁場強度と既存の磁界センサの

検出範囲を記した図を Fig.1-1に記す[4]。 Table1-1 Comparing of magnetic sensors

センサの種類 磁界検出範囲[G] 長所 短所

ホール素子 62 10~10− ・磁極の判別可能 ・直流磁界の測定可能

・高温(120度)で動作しない[5] ・最大応答周波数が数 10kHz

磁気抵抗素子 62 10~10− ・素子サイズを非常に

小さく出来る ・温度変化により出力が変化する ・磁極判別不可

MIセンサ 26 10~10− ・素子を小型化できる ・交流電流で励磁する必要がある ・電圧変換回路が必要[6][7]

Fig.1-1 Magnetic field intensity and existing magnetic sensor’s operating range. そこで本研究では圧電素子の振動を用いた新しく、単純な原理を用いた磁界センサ“圧電

振動型磁界センサ”を提案する。今回提案する圧電振動型磁界センサの利点を以下に記す。

- 1 -

第 1章 緒論

・ 材料特性に依存しないため、高温(300度)でも動作可能であり、温度特性がよく、直線性良好である。

・ 磁極判別可能。 ・ 直流磁界に対して交流出力をとる。 ・ 電圧変換回路が不要 ・ 圧電振動ジャイロ回路を流用可能。 ・ 検出回路部を微細、集積化したら高感度のセンサが可能。 1.2 研究目的 ・ 感度が向上するような素子の構造を設計し、試作する。 ・ 試作した素子の特性を評価し理論値と比較する。 ・ 円板型センサにおいて漏れ電圧が軽減するような、最適な形状を検討する。 1.3 本論文の構成 本論文の構成を以下に記す。 第1章では本研究の背景を述べ、新しい原理の磁界センサ“圧電振動型磁界センサ”を提

案し、本研究の目的を明らかにした。 第2章では圧電振動型磁界センサの動作原理について述べる。また今回試作した素子の構

造および本研究の測定系を記す。 第 3章では試作した長さ方向縦振動型センサの特性を評価した結果を記す。 第4章では試作したたわみ振動型センサの特性を評価した結果を記す。 第5章では試作した円板型センサの特性を評価した結果を記す。また漏れ電圧についての

問題を解決するために 2種類の円板型センサを作製し、比較検討した結果を記す。 最後の第6章でまとめと 3種類の構造法の比較と現段階の本研究における課題を記す。

- 2 -

第2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系

第2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系

2.1圧電振動型磁界センサの動作原理 Fig.2-1のような長さ方向縦振動を起こす矩形板の圧電素子を例にとって動作原理を説明する。このとき圧電素子の両面はともに電極がついており、分極方向は厚さ方向である。ま

た検出電極は基板の端に、振動速度に直交するようにとる。 この素子に磁界を印加すると磁界を横切って、検出電極が振動するため電磁誘導により、

フレミングの右手の法則で示される方向に振動周波数と等しい交流電圧が発生する。この

出力電圧を感知することにより、磁界センサとして動作させることが可能となる。このよ

うに圧電振動型磁界センサはとても単純な原理を用いていることが特徴の一つである。

PZT

Poling

BAngle

θ0

90

L

v

B

Vout=nvBL・cosθ

Sensing electrode

Exciting electrode

Fig.2-1 Basic configuration of the magnetic field sensor

using longitudinal vibration of a rectangular plate. 2.2出力電圧の理論式の算出 理論的な出力電圧の値を求めていく。ここで振動速度 v、磁束密度 B、電極の長さ Lと変数を置く。電磁誘導に関するファラデーの法則より、一つのループに電磁誘導により発生す

る起電力は、直交する磁場の減少する割合に比例する[8]ので出力電圧は以下のように表すこ

とができる。

vBLdtdSB

dtdVout ==Φ

=|| (2-1)

- 3 -

第2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系

Φは磁束であり、S は磁場が貫く面積である。式(2-1)に検出電極数 n、磁場入射角度θという 2つの変数を追加すると、出力電圧は以下の式を用いて表すことが出来る。

θcos⋅= nvBlVout (2-2)

式(2-2)に示したように出力電圧の振幅は磁束密度 B に比例するため、出力電圧の振幅を計測することにより磁場強度を検出することが出来るのである。またこの式(2-2)より磁界センサの感度を向上する際には振動速度v、電極の長さ L、検出電極数 n を増加させる必要があることが確認できる。 第 3章以降の理論値を求める際にはこの式(2-2)を用いて計算を行った。 2.2.1理論感度の算出 Fig.2-1に記す矩形板による長さ方向縦振動型センサを用いて、理論感度を算出する。検出電極を両面の端に1つずつ計4箇所設け、電極幅、電極間隔ともに 5 μmとし1箇所に 100個、つまり計 400個の検出電極を設けるとする。また電極の長さ Lは本研究で用いた素子と同様の 7 mmとし、振動速度 vは本研究で用いた最大速度 0.7 m/sとした。 以上の条件を Table2-1にまとめる。

Table2-1 Decision of parameters when calculate a theoretical sensitivity. 振動速度 v [m/s] 0.7 電極の長さ L[mm] 7 電極数n 400

このように変数を決定したとき地磁気の 1/30 の強度である10 G において、出力電圧は式(2-2)よりV

2−

Vout µ2= となる。これは現在市販されているホール素子と同等の感度をしめ

す。 2.3漏れ電圧に対する考察 本研究で提案する“圧電振動型磁界センサ”は磁界を印加する前に検出電極に振動を励振

する電圧が電気容量などを介して漏れてしまうが、この漏れ電圧が高いと出力電圧を意味

する相対的な電圧変化が小さくなり、圧電振動型磁界センサの感度が悪くなってしまう。

先にも述べたように漏れ電圧は励振する電圧が漏れているため、この電圧が高ければ、言

い換えるならば振動速度 v が速ければ高くなる。また漏れ電圧が発生する理由はその他にも考えられる。例えば円板型センサでは他の2種類の構造法に比べ、漏れ電圧が顕著に高

くなってしまうという問題が発生した。そこで 2 種類の円板型センサを作製し、比較した結果、漏れ電圧が低くなるような構造を示した。詳細は 5.2で記す。

- 4 -

第2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系

また第 3 章から記す測定結果の出力電圧は全て、“磁界印加後の電圧から漏れ電圧を差し引いた電圧”のことを意味する。 2.4試作品の構造 まずは感度を向上する際にはどのようなことが重要となってくるかを考察する。先にも述

べたが、感度を向上させるには振動速度v、電極の長さ L、電極数 nを増加させる必要がある。しかしながら現実問題としては振動速度vを速くしすぎると素子が破壊してしまう

ため、振動速度vを速くする事には限界が生じる。よって感度を向上させる際には電極の

長さ L、電極数 nを増加させることがもっとも効率的である。 本研究ではこのようなことを踏まえて現在までに 3種類の素子を試作した。以下に試作した素子の構造を記す。 ・長さ方向縦振動型磁界センサ ・円板型磁界センサ ・ たわみ振動型磁界センサ それぞれの素子の特徴は第 3,4,5章で記していく。 2.5本研究の測定系 本研究の基本的な測定系を Fig.2-2 に記す。今回は長さ方向縦振動型センサを例として用いる。

L

B

v

Poling

Output

Lock-inAmplifier

Ref.Sig.

Fig.2-2 System of measurement of this study.

- 5 -

第2章 圧電振動型磁界センサの原理と測定系

3種類の素子全てでロックインアンプを用いて出力電圧を測定した。 また振動速度 vと圧 り立つ。 電素子を流れる電流 iには以下のような関係式が成

A =

ここで Aのことを力係数といい、力係数は素子 の定数値である。 本研究ではこの定数 Aを LDVにより求め、オシロスコープにより圧電素子を流れる電流

内蔵されている “Model 410 Gaussmeter”(LakeShore社製)を用

(2-3)

特有

iv

iを観測し、式(2-3)に代入して振動速度を求めて測定を行った。 また 3種類の素子ともに振動速度特性および磁束密度特性の測定の際、磁場入射角度θはべて 0°である。

また本研究では自作したヘルムホルツコイル(付録 1 参照)を用いて磁界を印加した。磁場強度はホールセンサが

いて測定した。この Gaussmeterの磁束密度分解能は 0.1 Gである。

- 6 -

第3章 長さ方向縦振動型センサ

第 3章 長さ方向縦振動型センサ

3.1 さ方向縦振動型センサの製作 原理を説明する際に用いた Fig.2-1のような素子を用いて測定を行った。このような構造を

呼ぶことにする。Fig.2-2には実際に試作した長さ方

圧電振動型 縦振動型

ンサを試作した。このセンサの特徴としては検出電極を容易に多量とることができると

研究で用いた素子(C-21)の共振周波数の理論値を算出した結果を以下に記す。

もつ素子を長さ方向縦振動型センサと

向縦振動型センサの写真(富士セラミックス、C-21)を記す。素子サイズは 43 mm*7 mm*1 mm である。また黒い部分で絶縁しており、検出電極は両面とも端に 1 個ずつ計 4 個とった。

43mm

mm

Thickness:1mm

B

v

Sensing electrode

Fig.3-1 Prototype of the longitudinal vibrator. (Fujiceramics, C-21)

磁界センサが理論的に動作をするかを確認するために、この長さ方向

いうことである。素子の端に検出電極を集積化して数多く取ることにより電極数nが大き

くなるため、感度も大幅に向上することが期待できる。 3.1.1長さ方向縦振動型センサの共振周波数の測定 本

][7.37 kHzf === 043.0lr

162031N

Exciting electrode

(3-1)

7

31N

kHzである。これよりほぼ理論値と一致していることが分かる。この共振周波数付近を用いて測定を行っていった。

は周波数定数、lは矩形板の縦の長さのことを指す。次にインピーダンスアナラ

用いて測定した|Z|-θの周波数特性を Fig.3-2 に記す。Fig.3-2 より共振周波数はおよそ37.4

イザを

- 7 -

第3章 長さ方向縦振動型センサ

3.2長さ方向 特

形板の長さ方向縦振動型センサの場合力係数は以下のような式で表すことが出来る。こ

34 36 38 40 42 440

10000

20000

30000

-90

-60

-30

0

30

60- |Z|… θ

Frequency[kHz]

Impe

danc

e[Ω

]

Pha

se[d

eg.]

Fig.3-2 |Z| and θvs. Frequency for the longitudinal vibrator.

90

縦振動型センサの 性 矩

こで電極の長さ L、等価圧電定数 31d 、弾性定数 とする。 、 ともに圧電素子固有11Y 31d 11Yの値である。

i (3-2) 11312 YLd

vA ==

式(3-2)に値を代入すると力係数は A=0.155 と求まる。 方 LDV を用いて測定した結A=0.126 であった。これよりほぼ理論どおりの値が得られていることが分かる。以下で行

果は

っている理論値の導出の際にはこの LDVにより求めた力係数 Aの値を用いた。 以上に記した中で重要な本素子の特性値を以下の表にまとめる。

Table3-1 Characteristics value of the longitudinal vibrator. 共振周波数 f[kHz] 37.2 電極の長さ L[mm] 7 電極数n 4 力係数 A 0.126

.2.1漏れ電圧の大きさ 動速度が約 580 mm/sのとき、漏れ電圧の値はおよそ 2.0 μVである。これは他の 2つ

い値である。

3振

の構造と比べもっとも低

- 8 -

第3章 長さ方向縦振動型センサ

3.2.1振動速度特性 まずは実際の測定波形を Fig.3-3に記す。ただしこの波形も“磁界印加後の電圧-漏れ電圧”

しているロックインアンプではなく、オシロスコープによって出力波

の Fig.できた。次

であり、Fig.2-2に記形を測定した結果である。また B=20 Gのときの出力波形である。

3-3

v

Vout

0.0

0.0

Volta

ge[m

V]

Fig.3-4 O

Fig.3-3 Waveforms of vibration velocity (black line) and theoutput voltage (red line) for the magnetic flux density of 20G.

ることが確

記す。 を見ると式(2-1)に記したように出力電圧が振動速度に比例していに長さ方向縦振動型センサの振動速度特性のグラフを Fig.3-4に

- 9 -

0 100 200 3000

1

2

Magnetic field B10.5 G

△ 14.0 G■ 17.2 G- calculated value

Vibration velocity[mm/s]

utput Voltage vs. the vibration velocity for the longitudinal vibrator.

第3章 長さ方向縦振動型センサ

- 10 -

0 5 10 15 200

0.01

0.02

Magnetic flux density[G]

Vol

tage

[mV

]

Vibration velocity v● 116 mm/s△ 194 mm/s■ 235 mm/s- calculated value

igることが確認できた。

Fig.3-5 Output Voltage vs. the magnetic flux density for the longitudinal vibrator.

0.03

線は式(2-1)より算出した理論直線である。以降の特性のグラフにある直線は全てこの理直線である。この Fig.3-4からも理論通りにこの磁界センサが動作していることが確認で

.2.2磁束密度特性 ig.3-5に長さ方向縦振動型センサの磁束密度特性のグラフを記す。

た結果を Fig.3-6に記す。

度に対する分解能が 0.2 G程度であ

きた

3F F .3-5からも長さ方向縦振動型センサがきちんと理論どおり磁束密度に比例して動作してい

Fig.3-5はおよそ 10 G程度が最小磁界であるが、それよりも弱い微小磁界でも理論どおりに動作しているかを確認し

Fig.3-6より微小磁界でも長さ方向縦振動型センサが理論どおりに動作することが確認できた。また今回試作した長さ方向縦振動型センサの磁束密

り、最小検出可能磁場強度が 0.4 G程度であることが確認できた。ただし本研究で磁場強度

の測定に用いた“Model 410 Gaussmeter”(LakeShore社製)の分解能が 0.1 Gであり、 110− G オーダーの磁場強度までしか測定できなかったため、このような結果となったが、実際はもっと微小な磁界変化や磁場強度も検出可能であると考えられる。

第3章 長さ方向縦振動型センサ

- 11 -

0 30 60 900

0.01

0.02

Angle[deg]

Volta

ge[m

v]

B = 14 Gv = 226 mm/s- calculated value

3.2.3磁場入射角度特性 後に磁場入射角度θに対する出力電圧のグラフを Fig.3-7 に記す。測定条件は磁場強度

6 mm/sである。

0 1 2 30

1

2

3

4

Magnetic flux density[G]

Volta

ge[μ

V]

Vibration velocity v● 473 mm/s△ 581 mm/s- calculated value

Fig.3-6 Output Voltage vs. the low magnetic flux density for the longitudinal vibrator

5

B=14 G、振動速度 v=22

.

Fig.3-7 Output Voltage as a function of the angle of the Magnetic field.

第3章 長さ方向縦振動型センサ

Fig.3-7を見ると分かるように、こちらもほぼ理論どおりに動作しており、磁極の判別が可であ

上の全ての測定結果より今回提案した圧電振動型磁界センサが理論どおりに振動速度、

束密度に比例し、磁極の判別が可能であることを示した。

るということが確認できた。 能

電子コンパスなどに応用する場合にはこの磁場入射角度θに対する電圧特性が重要となっ

てくる。 以

また Fig.3-6から、長さ方向縦振動型センサの磁束密度に対する分解能が 0.2 G程度であることを示した。

- 12 -

第4章 たわみ振動型センサ

第4章 たわみ振動型センサ

4.1 わみ振動型センサの製作 Fig.4-1にたわみ振動型センサの構造、Fig.4-2に実際に作製したたわみ振動型センサの図を

電素子(富士セラミックス、C-213)を張り合わせたユニモ

記す。本研究では金属(Al)と圧ルフ型たわみ振動子を用いた。素子サイズは 43 mm*7 mm*2 mmであり、検出電極は PZTの端に1つとった。これは検出電極を 2 つとると漏れ電圧が増大することにより、ロックインのレンジが上がってしまい、測定の正確さに欠けるためである。 Sensing elecv

B

PZTMetal

Exciting electrode

trode

Thickness:2mm43mm

mm v

BAl

PZT

Exciting Sensing electrode electrode

Fig.4-2 Prototype of the bending vibrator. (Fujiceramics, C-213)

Fig.4-1 Configuration of the bending vibrator.

7

- 13 -

第4章 たわみ振動型センサ

ホール素子など既存の磁界センサは基板平面と垂直な磁場を検出しているが、このたわみ

振動型センサは基板平面と平行な磁場を検出できるという特徴を持っている。これにより

法線方向の磁場をもっている平面に対して垂直な方向にセンサをかざしながら平面の磁場

強度を測ることが可能となるので、既存の磁界センサよりも正確な磁場分布を測定できる

と考えられる。 4.1.1たわみ振動型センサの共振周波数の測定 Fig.4-1に記したように、速い振動速度を得るために本研究では1次モードのたわみ振動を用いた。試作した際に用いた Alの特性値が分からないため、ユニモルフ型たわみ振動子の理論共振周波数を求めることは出来ないが、圧電性の方向を変えて圧電素子を 2 枚張り合わせたバイモルフ型たわみ振動子の共振周波数が 3.2 kHz と式(4-1)より算出できる[9]こと

から、共振周波数は数 kHzであると予想できる。

2.3133.1

0

2

2 ==ρ

π ERl

f r kHz (4-1)

ただしlは矩形板の縦の長さ、E はヤング率、R は断面の回転半径、 0ρ は圧電素子の密度のことを指す。 次にインピーダンスアナライザを用いて測定した|Z|-θの周波数特性を Fig.4-3 に記す。Fig.4-3より共振周波数はおよそ 4.4 kHzである。この共振周波数付近を用いて測定を行っていった。

4 4.2 4.4 4.6 4.8 50

10000

20000

30000

40000

50000

-90

-60

-30

0

30

60

90

Frequency[kHz]

Impe

danc

e[Ω

]

Pha

se[d

eg.]

- |Z|… θ

Fig.5-3 |Z| and θvs. Frequency for the bending vibrator.

- 14 -

第4章 たわみ振動型センサ

4.2たわみ振動型センサの特性

たわみ振動型センサの力係数を LDVにより測定した結果、A=9 であった。 310473. −×以上に記した中で重要なたわみ振動型センサの特性値を Table4-1にまとめる。

Table4-1 Characteristics value of the bending vibrator. 共振周波数 f[kHz] 4.4 電極の長さ L[mm] 7 電極数n 1 力係数 A 310473.9 −×

4.3.1漏れ電圧の大きさ 振動速度が約 110 mm/s のとき、漏れ電圧の値はおよそ 3.6 μV である。これは長さ方向縦振動型センサに比べると若干高い値ではあるものの、十分小さな値であり安定性も高い。 4.3.2振動速度特性 たわみ振動型センサの振動速度特性を Fig.4-4に記す。

0 50 100 1500

0.2

0.4

0.6

0.8

Vibration velocity[mm/s]

Volta

ge[μ

V]

Magnetic field B● 3.3 G△ 5.7 G■ 7.0 G- caluculated value

Fig.4-4 Output Voltage vs. the vibration velocity for the bending vibrator.

Fig.4-4よりほぼ理論どおりにたわみ振動型センサが動作していることが確認できた。また直線性が良好であることも確認できた。

- 15 -

第4章 たわみ振動型センサ

4.3.3磁束密度特性 Fig.4-5にたわみ振動型センサの磁束密度特性のグラフを記す。

0 2 4 6 8 100

0.2

0.4

0.6

0.8

Vol

tage

[μV

]

Magnetic flux density[G]

Vibration velocity v● 57.00 mm/s△ 86.56 mm/s■ 109.8 mm/s- caluculated value

Fig.4-5 Output Voltage vs. the magnetic flux density for the bending vibrator.

Fig.4-5からもたわみ振動型磁界センサが理論どおりに動作していることが確認できた。では微小磁界部分でも正確に動作しているかを確認するために、Fig.4-6に微小磁界特性の図を記す。

0 1 20

0.05

0.1

0.15

0.2Vibration velocity v● 57.00 mm/s△ 86.56 mm/s■ 109.8 mm/s- caluculated value

Vol

tage

[μV

]

Magnetic flux density[G]Fig.4-6 Output Voltage vs. the low magnetic flux density for the bending vibrator.

- 16 -

第4章 たわみ振動型センサ

Fig.4-6よりこのたわみ振動型センサの磁束密度分解能は約 0.2 Gであることが確認できた。このたわみ振動型センサも長さ方向縦振動型センサと同様に、実際はより弱い磁場も検出

可能であると考えられる。 4.2.3磁場入射角度特性 最後に磁場入射角度θに対する出力電圧のグラフを Fig.4-7 に記す。測定条件は磁場強度B=12 G、振動速度 v=89.7 mm/sである。また今回は検出電極を 1つではなく、圧電素子の端に1つずつ計 2 個とった。このようにしたのは奥行き方向に関してヘルムホルツコイルの中心ほど磁場が強くなるというように、若干磁場強度のばらつきが存在するためである。

検出電極を 2 つ取ることにより、この磁場強度のばらつきの影響を軽減できるためこのような条件で測定を行った。

0 15 30 45 60 75 900

0.5

1

1.5

Vol

tage

[μV]

Angle[deg.]

B = 12 Gv = 89.7 mm/s- caluculated value

Fig.4-7 Output Voltage as a function of the angle of the Magnetic field for the bending vibrator.

Fig.4-7を見ると出力電圧が理論値よりも多少小さいが、角度が増すほどに出力電圧が減少していることが確認できる。 以上の測定結果から、たわみ振動型センサは安定性に優れ、力係数が小さいつまり低電流

で高振動速度が得られるセンサであるということを確認した。

- 17 -

第5章 円板型センサ

第5章 円板型センサ

5.1円板型センサの製作 第 2章の 2.3で述べたように、円板型センサには漏れ電圧が比較的高いという問題が発生したため、円板型センサ 1と円板型センサ2という 2種類の構造を作製し、漏れ電圧が低くなるような構造を比較検討した。 5.1.1円板型センサ 1の構造 試作した円板型センサ1の構造を Fig.5-1(富士セラミックス、C-213)に記す。この円板は Fig.5-1 に記すように拡がり振動を起こし、検出電極が外周の渦巻き型電極である。このように検出電極をとることにより電極の長さLを簡単に長く取ることが出来るという利点が存在する。矩形板を用いた素子の Lが 7 mmであったのに対して、こちらの円板型磁界センサは、素子サイズはほぼ変わらないが 100 mmであることからも分かる。電極間の距離、電極の幅を短くし、何周も検出電極を取れば Lを長くすることが可能である。これにより大幅な感度の向上が期待できる。本研究で用いた素子サイズは直径 16 mm、厚み 1 mmであり、電極幅、電極間隔ともに 0.5 mmである。素子の分極方向は厚さ方向であり、両面とも同様の電極パターンを持っている。

OutputB

Sensing electrode

Exciting electrode16mm

v

Fig.5-1 Configuration of disk vibrator 1. (Fujiceramics, C-213)

- 18 -

第5章 円板型センサ

5.1.2円盤型センサ 2の構造 試作した円板型センサ2の構造を Fig.5-2 に記す。素子の種類およびサイズは円板型センサ1と同様である。電極の長さ Lは4周全てを用いると 145 mmとなる。この円板型センサ 2と先の円板型センサ 1との違いは分極部分である。円板型センサ 1は素子全体が分極をしていたが、円板型センサ 2は中央の励振電極部分が分極を起こしているということである。また円板型センサ 2は検出電極が1周ずつ別れているので検出電極どうしの半径差短いという点も円板型センサ 1と異なる点である。このような違いにより漏れ電圧がど

本研究で用いた素子(C-213)の共振周波数の理論値を算出した結果を以下に記す。型センサ1、円板型センサ2ともに同じであり、式(5-1)により表せる。

のように変化するかについては 5.2において比較検討する。

B

v

Output

Sensing electrode

Exciting electrode

16 mm

Fig.5-2 Configuration of disk vibrator 2. (Fujiceramics, C-213)

5.1.3円板型センサの共振周波数の測定

円板

016.02230

DN

][139 kHzf pr ===

インピーダンpN

(5-1)

は円板型構造のときの周波数定数、D は円板の直径の長さを指す。次に

スアナライザを用いて測定した円板型センサ1、2の|Z|-θの周波数特性を Fig.5-3、5-4に記す。

- 19 -

第5章 円板型センサ

140 150 160 170 1800

5000

10000

15000

-90

-60

-30

0

30

60

90

Frequency[kHz]

Impe

danc

e[Ω

]

Phas

e[de

g.]

- |Z|… θ

Fig.5-3 |Z| and θvs. Frequency for the disk vibrator 1.

140 150 160 170 1800

5000

10000

15000

-90

-60

-30

0

30

60

90

Frequency[kHz]

Impe

danc

e[Ω

]

Phas

e[de

g.]

- |Z|… θ

Fig.5-4 |Z| and θvs. Frequency for the disk vibrator 2.

Fig.5-3、5-4より円板型センサ1、2ともに共振周波数はおよそ 151 kHzである。この測定により求めた共振周波数付近を用いて測定を行っていった。

- 20 -

第5章 円板型センサ

5.2円板型センサ1と円板型センサ2の漏れ電圧の比較 5.2.1圧電効果による影響 漏れ電圧が発生する原因について考察した結果、圧電効果の影響があると思われる。本研

究では電圧を印加することにより、圧電体が変形するという逆圧電効果をもちいて PZTを振動させていたが、これは逆に圧電体が変形することにより検出電極で電圧が発生すると

いう圧電効果がおこっているとも考えられる。この仮定を検証するため以下のような測定

を行った。 Fig.5-5、5-6 のように円板型センサ 1 の検出電極として全周(3 周)用いたときと、外周(1周)のみを用いたときを比較検討した。素子は同一のものを用いて測定を行ったため、異なる点は検出電極の取り方のみである。

- 21 -

100 120 140 160 1800

1

2

3

4

● 1 round△ 3 rounds

Vibration velocity[mm/s]

Leak

ing

volta

ge[m

V]

Output Output

Fig.5-5 A disk vibrator 1 of 3rounds(L=100 mm). Fig.5-6 A disk vibrator 1 of 1round(L=40 mm).

Fig.5-5をみると分かるように、全周をもちいた円板型センサ(L=100 mm)の検出電極の末端は半径差が大きい。それにより検出電極内部においてゆがみの差がおきて電圧が発生

していると考えられる。これと比較するため Fig.5-6 に示すように外側の一周のみを用いたとき(L=40 mm)と全周を用いたときの、漏れ電圧を比較した結果を Fig.5-7に記す。また Fig.5-8に Fig.5-5と Fig.5-6の素子を用いたときの出力の速度特性を記す。

Fig.5-7 Comparing leaking voltages of the disk vibrator 1.

第5章 円板型センサ

0 50 100 150 2000

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

Vibration velocity[mm/s]

Vol

tage

[mV

]● 1 round△ 3 rounds

Fig.5-8 Comparing output voltages of the disk vibrators.

Fig.5-7 より外周のみ用いたときは全周用いた円板型センサに比べ、漏れ電圧がおよそ73%減になっていることが確認できる。一方 Fig.5-8 に記すように、出力は理論どおりにおよそ 60%減(=(100-40)/100)となっているので、漏れ電圧が発生する理由のひとつに、圧電効果の影響があると測定により確認できた。 これより円板型センサ2は出力端の半径差が円板型センサ1に比べ短いため、圧電効果に

よる影響が少なくなり漏れ電圧が低くなるということが予想できる。 5.2.2励振電極と検出電極間の距離による影響 Fig.5-2 に記した円板型センサ 2 を用いて、励振電極と検出電極の距離の長さにより漏れ電圧がどのような変化をするかを測定した。1番外側の電極を1、2番目を2、3番目を3として漏れ電圧を比較した結果を Table5-1に記す。ただしこのとき振動速度は 73.8 mm/sである。

Table 5-1 Round number vs. Leaking voltage (v=73.8 mm/s) Round number Leaking voltage[μV]

1 16.3 2 64.0 3 144

Table5-1を見ると分かるように、内側の電極ほど漏れ電圧が高いことが確認できる。励振電極と検出電極の距離に依存した、パラメータの影響によりこのような結果がでたと考え

られる。これより励振電極と検出電極の距離が長いほど漏れ電圧が低くなり感度が向上す

るということが確認できた。

- 22 -

第5章 円板型センサ

5.2.3分極部分による影響 ・外周のみを用いたとき 円板型センサ1と円板型センサ2の漏れ電圧を比較していく。このとき先に判明した圧電

効果による影響以外の原因を検討するため、圧電効果による影響が小さい一番外側の外周

のみを検出電極として用いて測定を行った結果を記す。

- 23 -

Output Output

Fig.5-9 A disk vibrator 2 of 1round(L=46 mm). Fig.5-10 A disk vibrator 2 of 3rounds(L=118 mm).

Fig.5-6、5-9の構造を用いて測定を行い、比較検討をした。このとき電極の長さ Lは Fig.5-6の素子が 40 mmであり、Fig.5-9の素子が 46 mmである。Fig.5-11にてもとめた円板型センサ1と2の漏れ電圧の振動速度特性における近似直線の傾きを Table5-2に記す。またFig.5-11に示している直線は近似直線である。

Table 5-2 Comparing of leaking voltages for the disk vibrator(1round) Slope

Disk vibrator 1 310*48.5 − Disk vibrator 2 410*59.6 −

0 50 100 1500

0.2

0.4

0.6

0.8

11round● Disk vibrator1△ Disk vibrator2

Vibration velocity[mm/s]

Leak

ing

volta

ge[m

V]

Fig.5-11 Influence of polarization area on the leaking voltages.

第5章 円板型センサ

Table5-2、Fig.5-11より漏れ電圧がおよそ 88%減となったことが確認できる。これより漏れ電圧を低くするためには、円板型センサ 2のように分極部分は励振電極部だけにする必要性がある。 ・3周用いたとき 圧電効果と分極範囲の影響という 2つの影響を足し合わせたら、漏れ電圧がどれほど軽減されるか検討するために、Fig.5-5、5-10のように外側から3周分を検出電極として用いた場合について比較した。このとき Fig.5-5 の素子の、電極の長さ L は 100 mm であり、Fig.5-10の素子の Lは 118 mmとなる。これより円板型センサ2のほうが高出力電圧を得ることが言える。 Fig.5-12にてもとめた円板型センサ1と2の漏れ電圧の振動速度特性における近似直線の傾きを Table5-3に記す。また Fig.5-12に示している直線は近似直線である。

Table 5-3 Comparing of leaking voltages for the disk vibrator (3rounds) Slope

Disk vibrator 210*98.1 − New disk vibrator 310*56.5 −

0 50 100 1500

1

2

3

4

3rounds● Disk vibrator1△ Disk vibrator2

Vibration velocity[mm/s]

Leak

ing

volta

ge[m

V]

Fig.5-12 Influence of piezoelectric effect and polarization area on the leaking voltages.

Table5-3よりセンサ2の漏れ電圧がセンサ1に対して 72%減となったことが確認できる。1周のときに比べ漏れ電圧の減少率が小さな値となってしまった理由としては、円板型セ

ンサ1と2の検出電極の長さ L の差が3周分のほうが1周分に比べ大きくなったことや、5.2.2で述べたように内側に行くほど漏れ電圧が高くなってしまう分、漏れ電圧の減少度合

- 24 -

第5章 円板型センサ

いも減ってしまったためであると考えられる。 以上の検討結果より、円板型センサの漏れ電圧が軽減し感度が向上するのは以下のような

特徴を持つ素子であることが言える。 ・ 中央電極部(励振電極部)のみ分極 ・ 励振電極と検出電極間の距離が長い ・ 検出電極の出力端の半径差が短い 下 2つの条件は円の出来うる限り外側に検出電極を微細化・集積化することにより解決できる。このようにすることにより漏れ電圧が軽減され、さらに電極の長さ Lも長くなるという一石二鳥の効果が期待できる。またこの検討結果より円板型センサ 2のほうが円板型センサ 1よりも優れている構造であるということが確認できた。よって以下に円板型センサ 2の測定結果のみを記していく。 5.3円板型センサ2の特性 円板型センサ2の力係数を LDVにより測定した結果は A=0.423であった。 以上に記した中で重要な本素子の特性値を Table5-4にまとめる。ただし今回は一番内側の電極を用いると漏れ電圧が高くなりすぎるため、Fig.5-10に記したように外側から3周分を検出電極として用いて測定を行った。

Table5-4 Characteristics value of the disk vibrator 2. 共振周波数 f[kHz] 151 電極の長さ L[mm] 118 電極数n 1 力係数 A 0.423

5.3.1振動速度特性 円板型センサ2の振動速度特性を Fig.5-13 に記す。Fig.5-13 より円板型センサが数 G の磁場内で理論どおりに振動速度に比例しながら動作していることが確認できる。円板型セ

ンサ1にくらべ直線特性が良好である。

- 25 -

第5章 円板型センサ

0 20 40 60 800

1

2

3

4

5

6V

olta

ge[μ

V]

Vibration velocity[mm/s]

Magnetic field B● 2.3 G△ 4.5 G■ 6.0 G

Fig.5-13 Output Voltage vs. the vibration velocity for the disk vibrator 2. 5.3.2磁束密度特性 Fig.5-14に円板型センサ2の磁束密度特性のグラフを記す。また Fig.5-15に微小磁界特性を記す。

0 5 10 150

5

10

15

Magnetic flux density[G]

Vol

tage

[μV

]

●:59.1 mm/s△:73.0 mm/s■:86.1 mm/s-:caluculated value

Fig.5-14 Output Voltage vs. the magnetic flux density for the disk vibrator 2.

- 26 -

第5章 円板型センサ

- 27 -

0 1 2 3 4 50

1

2

3

4

5

6

Magnetic flux density[G]

Volta

ge[μ

V]

●:59.1 mm/s△:73.0 mm/s■:86.1 mm/s-:caluculated value

Fig.5-15 Output Voltage vs. the low magnetic flux density for the disk vibrator 2. Fig.5-14,15より理論どおりに磁場強度に比例して出力電圧が増加しているが、長さ方向縦振動型センサやたわみ振動型センサに比べ、出力のばらつきが大きいことが見てとれる。

これは長さ方向縦振動型センサに比べると漏れ電圧が高く、安定性に欠けているためであ

る。ここで出力電圧が軽減するものの漏れ電圧も軽減される Fig.5-9 のような外側1周のみを用いた場合の磁束密度特性および、微小磁界特性を Fig5-16,5-17に記す。ただし電極の長さ Lは 46 mmである。

0 5 10 150

2

4

6

8

Volta

ge[μ

V]

Magnetic flux density[G]

●:59.6 mm/s△:84.6 mm/s■:104 mm/s-:caluculated value

Fig.5-16 Output Voltage vs. the magnetic flux density for the disk vibrator 2(1round).

第5章 円板型センサ

- 28 -

0 1 2 3 4 50

1

2●:59.6 mm/s△:84.6 mm/s■:104 mm/s-:caluculated value

Magnetic flux density[G]

Vol

tage

[μV

]

Fig.5-17 Output Voltage vs. the low magnetic flux density for the disk vibrator 2(1round) 出力は理論通り 3周用いたときに比べ 61%減となっているものの、出力のばらつきは軽減でき安定性が増した。まだ長さ方向縦振動型センサやたわみ振動型センサに比べると安定

性においては欠けるが、円板型センサ 2を用いたとき10 Gオーダーの磁界は検出可能である。また磁束密度分解能は 0.5 G程度である。円板型センサ 1の最小検出可能磁界強度が約 10 Gであったため、測定からも円板型センサ 2のほうが円板型センサ 1に比べ、感度が良いことが確認できた。

1−

5.3.3磁場入射角度特性 最後に磁場入射角度θに対する出力電圧のグラフを Fig.5-18に記す。先の測定より確認した感度は劣るものの安定性が高い Fig.5-9 のように外側1周のみを用いた構造を用いて測定を行った。測定条件は磁場強度 B=17 G、振動速度 v=85.1 mm/sである。 Fig.5-18より理論どおりに角度が急になるにつれ出力電圧が低くなっていることが確認できた。

第5章 円板型センサ

0 15 30 45 60 75 900

2

4

6

8Vo

ltage

[μV

]

Angle[deg.]

B = 17 Gv = 85.1 mm/s- caluculated value

Fig.5-18 Output Voltage as a function of the angle of the Magnetic field for the disk vibrator 2.

以上より円板型センサ 2が理論どおりに動作していることが確認できたものの、まだ漏れ電圧が高く安定性に若干欠けるという問題点が存在した。先にも述べたようにこの問題点

を解決するために円の出来うる限り外側に検出電極を微細化・集積化した素子を作製し、

特性を評価することが今後の課題である。

- 29 -

第 6章 結論

第6章 結論

6.1まとめ 本研究は圧電素子による振動を用いた全く新しい原理の磁界センサを提案し、3 種類の素子を試作し検討を行った。以下に本研究で得られた成果を記す。 ・ PZT による矩形板を用いた長さ方向縦振動型センサ、たわみ振動型センサと円板の拡がり振動を用いた円板型センサを試作・検討した。

・ 圧電振動型磁界センサが理論どおりに動作することを確認した。 ・ 3種類の構造の中で最も感度が良かった、長さ方向縦振動型センサにおいて 0.4 Gで出力電圧 0.58 μVを得た。このとき理論値は 0.60 μVである。

・ 3種類のセンサ全てで10 Gオーダーの磁場強度が検出可能であった。 1−

・ 円板型センサは漏れ電圧が高いため、2 種類の円板型センサを作成し漏れ電圧についての比較検討を行った。

・ その結果、中央にある励振電極部のみが分極し、励振電極と外周にある検出電極間の

距離が長く、2 つの検出電極出力端の半径差が短い構造ならば漏れ電圧が軽減するということを確認した。

試作した 3種類の素子についての比較は 6.1.1で行う。 6.1.1 3種類の構造法の比較 Table6-1に本研究で試作した 3種類の構造法を比較した結果を記す。 Table6-1 Comparing three types of sensors.

長さ方向縦振動型セ

ンサ たわみ振動型センサ 円板型センサ

素子サイズ[mm] 43*7*1 43*7*2 直径:16 厚み:1 共振周波数[kHz] 37.2 4.4 151 電極の長さ L[mm] 7 7 118

電極数n 4 1 1 力係数 A 0.126 310473.9 −× 0.423

最大感度[μV] (B=1.4 G)

1.9 0.117 1.6

漏れ電圧 低

2.0 μV(580 mm/s) 低

3.6 μV(110 mm/s) 高

402 μV( 73mm/s)

特徴 nを増大させること

が可能 基板平面と平行な磁

場を検出可能 L を長くさせることが可能

- 30 -

第 6章 結論

Table6-1 より現段階では長さ方向縦振動型センサがもっとも感度が良いことが確認できる。これは高振動速度が得られたためである。またたわみ振動型センサの力係数は他の 2つの素子に比べ小さな値であるが、低電流しか流れなかったため、高振動速度を得ること

が今回は出来なかった。また長さ方向縦振動型センサと同様にnを増大させることが可能

という利点もある。 円板型センサの漏れ電圧が他の 2つの素子に比べ、高いことが確認できる。検出電極を円の出来る限り外側に、微細化・集積化することによりこの問題を解決できるということを、

5.2に記した測定により示した。 6.2本研究の課題 今回試作した素子の検出電極を微細化・集積化することにより感度を向上させる。またこ

のようにすることにより、素子をミリオーダーサイズまで小型化する。 また今回試作した以外の構造をした磁界センサ(円柱型、SAW型など)を試作する。

- 31 -

謝辞

本研究を行うにあたり、指導教官である上羽貞行教授には輪講などの際に、適切な御助言

をいただきました。深く感謝を申し上げます。中村健太郎助教授には、終始丁寧に御指導

御鞭撻を賜り、本研究で用いた素子の構造法や測定系などに関して様々な御指摘を頂きま

した。深く感謝を申し上げます。 小山大介助手には LDV の使用法や、たわみ振動子の作製の際などに御指導を頂き感謝を申し上げます。高橋久徳技術職員、伊藤美恵子事務には研究室生活において様々なサポー

トをして頂き感謝申し上げます。 その他研究室の先輩方、同級生各位には研究に関して様々な御指導を頂きました。また研

究室生活においてはスポーツ大会に参加するなどして、交流の場を広く設けていただきま

した。感謝申し上げます。 本研究を行うにあたり、支えてくださった全ての方々に感謝を申し上げます。皆々様のお

かげで本日に至ることが出来ました。本当にありがとうございました。

- 32 -

参考文献 [1] James Lenz and Alan S. Edelstein: “Magnetic sensors and Their applications “ (IEEE Sensors,

2006) pp.631.

[2]TDK Techno Magazine“じしゃく忍法帳”第 10回 URL: http://www.tdk.co.jp/techmag/ninja/daa02000.htm [3]高嶋典明、備後武士 “磁気センサの原理と自動車技術への応用” pp2-9(2003) [4]浜松光電株式会社“MRテクニカルノート” URL: http://www.internix.co.jp/publish/newsletter/nl87_pdf/nl87hamamatsu.pdf

[5]旭化成電子株式会社ホームページ URL: http://www.asahi-kasei.co.jp/ake/jp/product/hall-trust.html [6] アイチ・マイクロ・インテリジェントホームページ

URL: http://www.aichi-mi.com/3_products/PRODUCTS.HTM [7] アイチ・マイクロ・インテリジェント 「トランジスタ技術」2003年 12月掲載記事 URL: http://www.aichi-mi.com/5_2_transistor_gijutu/transistor_gijutu.htm [8]末松安晴 “電磁気学” 共立出版株式会社 [9]西巻正郎 “改版 電気音響振動学” コロナ社 [10]太田恵造 “磁気工学の基礎Ⅰ” 共立出版株式会社

- 33 -

- 34 -

付録 1 ヘルムホルツコイルの製作 素子に均一かつ微小な磁場を印加するためにヘルムホルツコイルを自作した。 ヘルムホルツコイル内の磁束密度は以下の式により与えられる[10]。 30B = µ

222

2

)(2

2

ba

nIa

+(A-1)

このときコイルの半径を a、奥行き半径をb(Fig.A-1参照)、巻き数を n、電流を Iとした。

0µ は真空透磁率である。本研究にて用いるへルムホルツコイルのレンジを 0~25 G 程度とするため、TableA-1のようにヘルムホルツコイルの寸法を設計した。

TableA-1 Helmholtz-coil’s size. 半径 a [mm] 76

奥行き半径 b [mm] 40 巻き数 n 300

今回作成したヘルムホルツコイルの写真を Fig.A-1に記す。

a

Fig.A-1 Helmholtz-coil.

電流を片側に 0.5 Aずつ流したときの理論値と実測値の比較を TableA-2に記す。

TableA-2 Comparing observed value to calculated value. 理論値 17.2 G 実測値 16.0 G

TableA-2 より今回作成したヘルムホルツコイルがほぼ理論どおりに動作していることが確認できた。本研究ではこのヘルムホルツコイルを用いて磁場を印加した。