SHIMADZU APPLICATION NEWS...(面積%) Impurity1 Impurity2 Ofloxacin Impurity3 i-DReC なし 0.04...

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フォトダイオードアレイ検出器の新しいデータ解析法で あるダイナミックレンジ拡張計算機能 i -DReC(Intelligent Dynamic Range Extension Calculator)を用いれば,検出 器の信号が飽和する高濃度領域でも,スペクトルの相似性を 利用して,ピーク面積/高さを計算することが可能です。今 回は i -DReC の原理説明と,本機能を適用した医薬品成分に 含まれる不純物の面積百分率による分析例をご紹介します。 Y. Watabe 高濃度な試料の分析を行った場合,ピークがスケールアウ トしてしまい,ピークの正しい面積値が得られないことがあ ります。i -DReC では,吸収の小さな波長でクロマトグラム を切り出して求めたピーク面積(高さ)に,ピークの裾野で 切り出したスペクトルから計算した感度係数をかけることに より,対象ピークの面積(高さ)を求めます。処理の手順は 以下です。 1. ダイナミックレンジを超えた補正対象ピークの溶出領域 でのスペクトルを取得します。 2. このスペクトルについて,設定波長であるλa の長波長側 または短波長側で,強度値がダイナミックレンジ内とな る補正波長λb を自動的に探索します。 3. 補正波長λb でクロマトグラムを切り出し,波形処理を実 行します。そして,このクロマトグラム中で,補正対象ピー クに対応したピークを特定します。このピークの「ピー ク面積・ピーク高さ」を補正用データとします。 4. スケールアウトした対象ピークの後半部分で,強度値が 「感度補正スペクトル抽出強度」となる時間のスペクトル を自動抽出し,このスペクトルの波長λa の強度 Ia と補 正波長λb の強度 Ib の比(感度係数)k を求めます。 k = Ia/Ib 5. 3. で得られたクロマトグラムのピーク面積(高さ)に感 度係数(k)を乗じて,対象ピークの面積(高さ)を自動 算定します。 ピーク面積=(補正波長のピーク面積)× k ピーク高さ=(補正波長のピーク高さ)× k この機能を用いることにより,Fig. 2 のように,高濃度成 分の直線性を補正することが可能です。 i -DReC の基本原理 Fundamental Principle of i -DReC Function Fig. 1 i -DReC の基本原理 Fundamental Principle of i -DReC Fig. 2 i -DReC による検量線補正 Linearity Correction by i -DReC 感度補正スペクトル 抽出強度 mAU λ Ib I a 補正波長λbでクロマトグラムを切り出す 0 4000 mAU λ a しきい値 波長λb 波長λb 波長λa 感度係数=Ia/Ib スペクトルの波長λa の強度Iaと補正波長 λbの強度Ibの比から 感度係数を求める 感度補正 スペクトル ピークの裾野から感度 補正スペクトルを切り出す 0 2.5 5 7.5 濃度(g/L0 20 40 60 面積(×10 6 面積(×10 6 10 0 2.5 5 7.5 濃度(g/L10 0 100 200 Application News No. L451 フォトダイオードアレイ検出器の新機能 i -DReC (Intelligent Dynamic Range Extension Calculator) の不純物分析への応用 i -PDeA (Intelligent Dynamic Range Extension Calculator), A New Function of Photodiode Array Detector; An Application for Impurity Analysis. 高速液体クロマトグラフィー High Performance Liquid Chromatography LAAN-A-LC157

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Page 1: SHIMADZU APPLICATION NEWS...(面積%) Impurity1 Impurity2 Ofloxacin Impurity3 i-DReC なし 0.04 0.358 99.545 0.057 i-DReC あり 0.016 0.147 99.813 0.024 従来法 0.017 0.153

フォトダイオードアレイ検出器の新しいデータ解析法で

あるダイナミックレンジ拡張計算機能 i -DReC(Intelligent

Dynamic Range Extension Calculator) を 用 い れ ば, 検 出

器の信号が飽和する高濃度領域でも,スペクトルの相似性を

利用して,ピーク面積/高さを計算することが可能です。今

回は i -DReC の原理説明と,本機能を適用した医薬品成分に

含まれる不純物の面積百分率による分析例をご紹介します。

Y. Watabe

高濃度な試料の分析を行った場合,ピークがスケールアウ

トしてしまい,ピークの正しい面積値が得られないことがあ

ります。i -DReC では,吸収の小さな波長でクロマトグラム

を切り出して求めたピーク面積(高さ)に,ピークの裾野で

切り出したスペクトルから計算した感度係数をかけることに

より,対象ピークの面積(高さ)を求めます。処理の手順は

以下です。

1. ダイナミックレンジを超えた補正対象ピークの溶出領域

でのスペクトルを取得します。

2. このスペクトルについて,設定波長であるλ a の長波長側

または短波長側で,強度値がダイナミックレンジ内とな

る補正波長λ b を自動的に探索します。

3. 補正波長λ b でクロマトグラムを切り出し,波形処理を実

行します。そして,このクロマトグラム中で,補正対象ピー

クに対応したピークを特定します。このピークの「ピー

ク面積・ピーク高さ」を補正用データとします。

4. スケールアウトした対象ピークの後半部分で,強度値が

「感度補正スペクトル抽出強度」となる時間のスペクトル

を自動抽出し,このスペクトルの波長λ a の強度 Ia と補

正波長λ b の強度 Ib の比(感度係数)k を求めます。

k = Ia/Ib

5. 3. で得られたクロマトグラムのピーク面積(高さ)に感

度係数(k)を乗じて,対象ピークの面積(高さ)を自動

算定します。

ピーク面積=(補正波長のピーク面積)× k

ピーク高さ=(補正波長のピーク高さ)× k

この機能を用いることにより,Fig. 2 のように,高濃度成

分の直線性を補正することが可能です。

■ i-DReC の基本原理Fundamental Principle of i -DReC Function

Fig. 1 i -DReC の基本原理Fundamental Principle of i -DReC

Fig. 2 i -DReC による検量線補正Linearity Correction by i -DReC

感度補正スペクトル抽出強度

mAU

λ

Ib

Ia

補正波長λbでクロマトグラムを切り出す

0

4000mAU

波長λa

しきい値波長λb

波長λb

波長λa

感度係数=Ia/Ib

スペクトルの波長λaの強度Iaと補正波長λbの強度Ibの比から感度係数を求める

感度補正

スペクトル

ピークの裾野から感度補正スペクトルを切り出す

0 2.5 5 7.5濃度(g/L)

0

20

40

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面積(×106)面積(×106)

10 0 2.5 5 7.5濃度(g/L)

100

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ApplicationNews

No.L451フォトダイオードアレイ検出器の新機能i -DReC (Intelligent Dynamic Range Extension Calculator) の不純物分析への応用i -PDeA (Intelligent Dynamic Range Extension Calculator), A New Function of Photodiode Array Detector; An Application for Impurity Analysis.

高速液体クロマトグラフィーHigh Performance Liquid Chromatography

LAAN-A-LC157

Page 2: SHIMADZU APPLICATION NEWS...(面積%) Impurity1 Impurity2 Ofloxacin Impurity3 i-DReC なし 0.04 0.358 99.545 0.057 i-DReC あり 0.016 0.147 99.813 0.024 従来法 0.017 0.153

分析計測事業部グローバルアプリケーション開発センター

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島津コールセンター

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No.

3100-06302-560-IK2013.6

初版発行:2013年6月

■不純物分析への応用Application for Impurity Analysis

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■Peak1. Ofloxacin

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■Peaks1. Impurity12. Impurity23. Ofloxacin4. Impurity3

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■Peaks1. Impurity12. Impurity23. Ofloxacin4. Impurity3

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Table 1 分析条件Analytical Conditions

HPLC System : Nexera X2Column : Shim-pack XR-ODS (75 mmL. × 3.0 mm I.D., 2.2 µm)Mobile Phase : As described in Japanese Pharmacopoeia Flow Rate : 0.5 mL/minColumn Temp. : 40 °CInjection Vol. : 2 µLDetection : SPD-M30A at 294 nm, response 0.24 sec,

sampling rate 240 msec.Flow Cell : Standard

Fig. 3 適正濃度オフロキサシンのクロマトグラムChromatogram of Ofloxacin at Appropriate Concentration

Fig. 5 高濃度オフロキサシンのクロマトグラム(拡大)Magnified Chromatogram of Ofloxacin at High Concentration

Fig. 4 高濃度オフロキサシンのクロマトグラムChromatogram of Ofloxacin at High Concentration

Table 2 各法による不純物含有率計算結果比較Comparison of Impurity contents with/without i -DReC function

医薬品等の不純物分析に関して,主成分に対して 0.1 % 程

度あるいはそれ以下の存在比の微量不純物は通常,信頼性確

保のため,以下のような手順で 2 回あるいはそれ以上の分析

に基づいて計算されます。

1. 主ピークの高さが,検出器の直線性が充分確保できる範囲

内(通常 1 AU 以下)になるような濃度に標準溶液を調製

して分析を行う。

2. 微量不純物が安定的に検出可能な高濃度の試料溶液を準

備し分析を行う。この場合,主ピークは検出器のダイナ

ミックレンジをスケールアウトすることが多い。

3. 1. 2. の間の濃度比(希釈率)で 2. の不純物ピークの面積

を除して 1. の状態での不純物ピークの面積を算出する。

4. こうして計算上得られた不純物面積と 1. の主ピーク面積

の総和から新たに面積百分率による不純物含有率を決定

する。

しかしながら,この作業では濃度の異なる溶液で最低限 2

度分析を行うことになります。この計算作業を一度の分析で

可能にするのが i -DReC 機能です。本機能を用いた分析では,

医薬品に含まれる微量不純物の濃度に合わせた高濃度試料を

分析するだけで妥当な不純物含有率の計算が可能です。以下

にニューキノロン系の感染症治療薬であるオフロキサシン中

の i -DReC 機能を用いた不純物含有率決定の例を示します。

ま ず, オ フ ロ キ サ シ ン 200 mg/L の 溶 液 2 uL を Nexera

X2 シ ス テ ム で 分 析 し ま す。 ピ ー ク 頂 上 の 吸 光 度 は 約

650 mAU 程度で十分検出器に直線性の範囲内にあると思わ

れます。

次に 10 g/L の高濃度オフロキサシンのクロマトグラムと

その部分拡大したものを示します。微量不純物の面積値,存

在比率を安定的に得るため,オフロキサシンの濃度が過大に

なり,ピークがスケールアウトしています。

スケールアウトしたクロマトグラムに i -DReC 機能を適用

し,主ピークのダイナミックレンジを拡張して得られた面積

値から計算した不純物含有率と従来法により得られた結果の

比較を以下のテーブルに示します。i -DReC の適用によって

従来法と同等の結果が半減した分析回数で得られることがわ

かります。

(面積 %) Impurity1 Impurity2 Ofloxacin Impurity3

i -DReC なし 0.04 0.358 99.545 0.057

i -DReC あり 0.016 0.147 99.813 0.024

従来法 0.017 0.153 99.731 0.025

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